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​白内障手術

水晶体再建術(眼内レンズ挿入)

水晶体は目の中でレンズの役目をする重要な組織です。たくさんの細胞が水晶体嚢という袋の中で規則正しく配列することで、透明な状態を保っています。白内障は水晶体が混濁した状態を言います。

水晶体は、一度濁ってしまうと、薬物などの治療では透明には戻りませんので手術治療が行われます。

これは濁った水晶体を取り出して、代わりに人工のレンズを移植する手術です。

水晶体は、透明な袋(水晶体嚢)と、その中身から構成されています
白内障で濁るのは、中身だけですので、先ず、袋(水晶体嚢)の前面を一部切除して、中身だけを取り出し、残った水晶体嚢の中に眼内レンズを固定します。(図1~図3)

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水晶体嚢の前面を切開する(図1) 

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濁った中身を全て取り出す(図2)

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嚢に眼内レンズを入れる(図3)

​白内障手術時には、ピント合わせをする水晶体を取り除くので、代わりにこの働きをする人工眼内レンズが必要です。手術によって、濁った水晶体からクリアな眼内レンズにすることで、明るい視界をもたらすことが可能になります。

標準的な手術時間は15分から20分くらいです。難しい症例の場合、特に手術中に後嚢破損やチン小帯断裂などが発生した場合には追加手術が必要になり1時間以上かかる場合があります。

人工の眼内レンズ(単焦点レンズ)はピントが1ヶ所にしか合いません。術後、手元や遠くをはっきり見たい時は、それぞれ眼鏡による矯正が必要です。

 

術後合併症予防のため、手術3日前から抗菌剤点眼をして頂きます。また、術後も1ヶ月程度点眼が必要です。点眼や創口の処置を正しく行わないと眼内炎等を生じる危険性が高くなりますので、点眼や処置が出来ない場合には手術を施行できません。

 

<術後の生活について>

術後約1週間は創口の接着が弱いため、創口閉鎖不全や感染症に最も注意が必要です。

保護めがねを術後1週間は終日装用して下さい。指示通り確実に術後点眼を行って下さい。

術後2週間は暴飲暴食、激しい運動、力仕事は避けて下さい。術後1週間は蒸しタオルで顔を拭いて下さい。目を圧迫したり、こすったりしないで下さい。術後4日以降はシャワーによる洗髪は可能ですが、保護めがねを装用し、顔を上に向けて目に水が入らないよう気をつけて下さい。温泉やプールは術後1カ月から可能です。

事務仕事であれば術後3日以降は可能です。園芸や外仕事は術後2週間より可能です。

運転・歯科診療などは医師と相談してから開始して下さい。

【手術に注意のいるケース】

・外傷の既往
過去に眼をぶつけたことがある方は眼の中の水晶体の支えが弱っていて、水晶体嚢が破れやすく、初回手術で眼内レンズが挿入できないことがあります。昔の外傷でも手術に影響することがありますので、外傷の既往がある方は主治医に申し出て下さい。

・術中虹彩緊張低下症候群(IFIS)
IFISは前立腺肥大症治療薬を内服されている方に起こる眼の副作用で、白内障手術の際中に虹彩脱出や瞳孔径の縮小(縮瞳)をきたすものです。前立腺肥大症治療薬を内服されている方は手術を検討する際に主治医に申し出て下さい。

【合併症】

・破嚢・水晶体核落下

水晶体嚢が弱いと破れて(破嚢)水晶体が硝子体内に入ってしまう(水晶体核落下)ことがあります。数日間眼圧上昇することがありますが、わずかであれば自然に吸収されます。大きな核が落下した場合は、早急に連携医療機関にて硝子体手術を行なう必要があります。炎症の影響で視力があまり改善しないこともあります。

・駆逐性出血(脈絡膜出血)

頻度は非常に低い(0.01~0.06%)ですが、最も重篤な合併症のひとつです。

・感染(術後眼内炎)
手術中もしくは術後に眼内に細菌が侵入し増殖した状態です。頻度は約0.05%なので、実際に起こす確率は非常に低いです。感染を予防するために術前には眼周囲・眼表面の消毒を行い、術後には抗生剤の点眼を行います。炎症が強く重篤なものでは急激に悪化することがあり、その場合には緊急手術が必要になります。炎症が強い場合には視力障害の後遺症が残ることがあります。眼科的疾患(ぶどう膜炎・強膜炎・角膜炎など)・糖尿病・膠原病(リウマチ)・高血圧・感染症などの方はその危険性が増すと考えられています。

・眼内レンズ挿入不可
まれに水晶体の支持組織が弱く眼内レンズを挿入できないことがあります。後日二次的に眼内レンズを挿入する、または縫い付けることができます。

・術後屈折誤差
術前に決めた眼内レンズのピントの位置にずれを生じることがあり、術後屈折誤差といいます。元々遠視や近視が強い方、過去にレーシックなどの屈折矯正手術を受けられた方などでは屈折誤差が大きくなりやすいので注意が必要です。

・後発白内障
眼内レンズを納めている水晶体嚢が術後数ヶ月~数年経って濁ることがあり、後発白内障といいます。起こる頻度は10~30%で術後経過が長くなるとその割合が徐々に増加していきます。症状としては、白内障と同じように物がかすんで見え、視力低下をきたします。後発白内障で視力低下をきたした場合には外来でレーザーを用いて濁りを除去することが出来ます。

【白内障手術の適応】

  • 加齢性白内障

  • 糖尿病性白内障

  • ​浅前房

浅前房.jpg
手術前:浅前房
浅前房術後.jpg
手術後:浅前房が改善
 JSCRSホームページ改変引用
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